旅の写真、被写体はそこにある | Young Age Vol.25

公開日: ヤングエイジ

世界遺産ハンター ヤングエイジ

マクドナルドの安心感

2001年7月19日

朝起きて体調を確かめる。
胃がまだ全快じゃないがだいぶ良くなってきた気がする。

バタムアイランドはまだ2日目だ。
22日の出航まであと3日もある。
俺はこの町で身動きも取れず、足を止められた。

スィゲが30日にバリ島に来てしまう。
気持ちは焦るがどうにもならない事はどうにもならない。

昨日は、疲れていたしこの町の雰囲気に飲まれていた。
今日はフレッシュな気持ちでこの町をみてみようと思ったが、あらためてこの町を見ても空気が荒んでいるように見える。
警備兵の持つ物々しいマシンガンが俺をナーバスにさせる。

とりあえずインターネットカフェに行ってみたが日本語がインストールされていない上にゲキ遅で使いものにならない。
日本語のページは全て文字化けしていて読めなかった。

何か食いたかったがマレーシアで腐ったものを喰わされて以来、食に弱気になっていた。
この町で信用できるのはマクドナルドだけだ。

マックに入ると外の雰囲気とは一転して平和で穏やかな空気が流れていた。
さすがは世界のマックだ。
その辺の食べ物に比べればかなり高いが所詮はマクドナルド、それに日本よりは少しだけ安い。
何よりもボラれる事も無ければ食中毒になる事もない。
食べ慣れたマクドナルドの味が身に沁みる。

旅の写真

2001年7月20日

今日でこの町も三日目だ。
相変わらずやる事が全くない。

暇で暇でどうしょうもない。

三食マックは流石にキツいと思っていたらケンタッキーフライドチキンを見つけた。
これはいい。
ケンタとマックで無敵のローテーションが組める。

飯を食う以外に楽しみがなかったのだがバックパックに写るんですを忍ばせていた事を思い出した。

そうだ!
写真を撮ろう!

この町は汚かったが、ここまで汚いと逆にアーティスティックな写真が撮れるのじゃないかと思えて来た。

ゴミやドブを撮った。
写真は俺の目に代わり俺の見たものを後世に残してくれる。

俺は写真に没頭した。
気分は既にカメラマンだ。

写るんですを片手にドブやゴミを撮影している危篤な日本人。
奇抜な行動を取っている俺に興味を示した暇人どもが寄ってくる。

何してるんだ?
どこから来たんだ?

今まではボッタクリ野郎どもしか寄ってこなかったけれども今日は善良な暇人どもが寄って来た。
旅行者に声を掛けてくるのはボッタクリ野郎どもが大半だからボッタクリ野郎ばかりだと勘違いしてしまいがちだが、どこの国でもまともに暮らしている人々の方が圧倒的に多い。そんな当たり前の事に気が付いて気持ちが少し楽になった。

すると今まで見えていなかったものが見えて来た。

きったね〜バケツを風呂がわりにして体を洗っている乳飲み子
ボール遊びをしている子供たち
井戸端会議をしているおばちゃん連中
暇を持て余したおっさんたち

どんな場所だって大半の人々はみんな平和に暮らしている。
もっと素直に町を見るべきだった。

俺はこの町を撮影した。
ゴミ溜め、ドブ川、そこに生活する人々。

旅のアクシデントで4日も足止めされてしまったがそれを肯定的に捉え、写真を撮影する。
こんな事でもなければこんな町を撮影する事もなかっただろうな。
俺の中で何かが輝きだした。

これはすごい事だ!

こんな写真を一体、誰が撮れると言うのだろうか?
シャッターを切る度に己のセンスをビシバシと感じる。

写真集を出せるかもしれない!

何十枚も写真を撮った。

俺の旅、俺のセンス、これが俺の目だ!

そんなことを思いながら写真を撮った。

旅で大切な事は、何事にもどう対処するかと言う事だと思い知らされた。
暇を持て余して腐るも良し。
写真を楽しむのも良し。

旅は自由だ
良い旅にするのも、台無しにするのも全て自分次第
俺は試されているような気がした。

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あとがき

帰国後、バタムアイランドの写真を現像して愕然とした。
センスのカケラも感じない。

ゴミだった。
ゴミを撮っているのだから当たり前だけどただのゴミだ。
写真もゴミだ。

一体、この写真のどこがアーティスティックなのだろうか?
キレそうだった。

全部ゴミだ。
酷い有様だった。

ただの一枚も素敵な写真が見当たらない。
俺は一体、何にセンスを感じていたのだろうか?

あの時の興奮は一体なんだったのか?

勘違い?

いや、いや、写ルンですがクソなんです。

最近の若者の間では写ルンですが流行っているらしい
現像するまでどんな写真になるのかわからないのが新しいそうだ

何言っちゃってるの?
そりゃ現像するまでの期待感が楽しめるだけであってインスタ慣れしたお前らは愕然とするだけだ。
自分のセンスの無さに。

間違いないよ
だって俺もそうだったもん。

現像するまで、俺の写真はセンスの塊だと思っていた。
現像した瞬間に幻想は崩れ去る。

どうせお前たちはiPhoneで写真を撮ってインスタで加工しているんだろ?
で、なかなかセンスがあるなって思うわけだ。

俺だってそうだ。
今の時代は素晴らしい。

写ルンですは、クソなんです!

もし、この時に俺がiPhoneを持っていたら、それこそアーティスティックな写真が撮れていただろうな、きっと。

事実、俺はこの旅の数年後にカンボジアに行くんだ。
アンコールワットを撮影しに、最新鋭のコンデジを持って。

結果は酷い有様だったよ
当時のデジカメはクソだ。

俺は心底打ちのめされた。

カンボジアの世界遺産アンコールワット

センスの塊だと思っていた俺は写真のセンスが無いと思い知った。
写真なんて大嫌いだった。

そんな俺がもう一度、写真を撮るようになったのは会社の先輩にデジタル一眼レフを触らせてもらってからだった。良いレンズを使うと全然違う、今までとはまるで違う世界だった。

明るいレンズを使うと周りがボケる、ただそれだけでプロ級の写真に感じた。
あれだけ写真が下手だと思っていた俺が、こんなプロみたいな写真が撮れるのかと感動した。

俺、それから写真を撮るようになったんだ。
良いレンズを使って。

それから何万枚も写真を撮って、こう撮れば良いのかとか色々勉強したりもしたけれども
初めて一眼レフで写真を撮った時のあの感動は忘れられない。

このバタムアイランドで、
カンボジアのアンコールワットで
打ちのめされ、写真に劣等感を抱いたこの俺の心を氷解してくれた。

もう一度言う
写ルンですは、クソなんです!

そもそも写ルンですはスナップ用のカメラだ。
友達とかと気軽に記念撮影するには決して良くは無いがまぁまぁの写真が撮れたりすることもある。

風景やブツ撮りをするカメラでは無い。
当時の俺はもちろん、そんなことは知らない。
そもそも、カメラなんて写ルンです以外、使ったことも無かった。

よほど腕に自信がなければ写ルンですで風景を撮っちゃダメだよ。
ろくな写真が撮れる訳が無い。

特にアーティストを気取ってゴミを撮るなんてもってのほかだ。
まじでゴミが写っているだけだから。

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公開日: : 最終更新日:2018/03/09 ヤングエイジ

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