『戦場のピアニスト』第二次世界大戦中のユダヤ系ポーランド人の実録
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読書&映画
戦場のピアニストのあらすじ
舞台は1930年代後半、ポーランドの首都ワルシャワ。ピアニストとして活動しているユダヤ人、ウワディスワフ・シュピルマンの生活が第二次世界大戦により一変する。ナチスドイツがポーランド侵攻を開始し、主人公のシュピルマンが録音をしていたラジオ局はドイツ空軍による突然の爆撃を受け倒壊する、次第にワルシャワはドイツ軍に占領され、親衛隊と秩序警察の過激な弾圧によりユダヤ人の生活は悪化してゆく・・・
戦場のピアニストのキャスト
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロナルド・ハーウッド / ロマン・ポランスキー
原作:ウワディスワフ・シュピルマン
出演者:エイドリアン・ブロディ / トーマス・クレッチマン
2002年公開のフランス・ドイツ・ポーランド・イギリスの合作映画
原題は『The Pianist』
この映画は原作がウワディスワフ・シュピルマンとなっている通り、本人の体験記を脚色して映画化している。
戦場のピアニストの感想
舞台は世界遺産にもなっているワルシャワ、映画の中でもボッコンボッコンに破壊され尽くされ、瓦礫の山となる。ポーランドの世界遺産『ワルシャワ歴史地区』は、第二次大戦でナチスによって破壊されたものを復元したもので、「破壊からの復元および維持への人々の営み」が評価されユネスコの世界遺産に登録された。この映画を見た後にワルシャワに行くとまた違った風景が見えるかもしれないと思った。
この映画を見ると改めて戦争の悲惨さ、不条理さを確認する事になる。ある日までは普通のポーランド人として生活していたユダヤ系のポーランド人が、ある日を境に凄まじい迫害を受けるようになる。最初はカフェなどのお店ではユダヤ人お断りの張り紙がされ、公園のベンチに座る事も禁止されるようになり、次第に腕にダビデの腕章をつけさせられて区別され、更に強制的にゲットー(居住地区)に移動させられ、最後にはアウシュヴィッツなどの強制絶滅収容所に移動させられる。
ホロコーストの象徴と言われる「アウシュヴィッツ強制収容所」はポーランドの負の世界遺産として登録されている。
この映画の主人公、シュピルマンは運が良かったのでなんとか生き延びる事が出来たが、ユダヤ人がドイツ兵に一列に並ばされ、ランダムにお前とお前とお前!前に出ろと数人を選び、前に出た者が何の理由もなく撃ち殺されるなど理不尽極まりない映像は見ているだけでも辛かった。
この映画の救いとしては、鬼のように理不尽なドイツ兵の中にも血の通った人間はおり、シュピルマンは、あるドイツの将校に命を助けられると言う事。また、ドイツ人が鬼のような人間と言う訳ではなく戦争と言う状況が人間を変えてしまうと言う事がとても悲しかった。
一言で言うならば
見終わった後、どんよりと暗い気持ちになる映画
今回は、ヨーロッパを旅行する際に歴史の知識として勉強をしておきたい気持ちもあったので、そういった意味では実話だし、見て良かったと思う。
全米で大ヒットした『イングロリアス・バスターズ』
この映画を見た後だとなぜクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(舞台は第二次世界大戦中のフランス)が全米で大ヒットしたのかも少しは分かるような気がした。
イングロリアス・バスターズとはブラッド・ピット率いるユダヤ系アメリカ人の特殊秘密部で、ナチス兵を殺して殺して殺しまくると言うタランティーノらしい映画なのだが、当時この映画を見た時は、なぜにあそこまで虐殺する映画があんなにも賞讃されていたのかさっぱりわからなかった。
『戦場のピアニスト』を見た後になって少し理解出来たのだがアメリカにはユダヤ系の人が多く、ハリウッドにも絶大な影響力を持っている。つまりは映画で空想の復讐劇をタランティーノ監督はやったと言う事だった。(タランティーノはユダヤ系ではない)
また、第二次世界大戦で親族を失ったユダヤ人はかなり多く、普段、映画を見ない層まで『イングロリアス・バスターズ』を見に行き、スタンディングオベーションの嵐だったそうだ。それくらい今でも根の深い問題となっている。
個人的には『レザボアドッグス』や『パルプフィクション』などのギャング映画は好きだがこの『イングロリアス・バスターズ』はあまり好きにはなれなかった。『戦場のピアニスト』を見た今、もう一度、この映画を見たらならば、また違うものが見えるかもしれないと思った。
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