フィリピンの海で初ダイビング | 台風がやって来る編

日曜日、轟々と唸る風と強い雨音で目が覚めた。辺りはまだ暗く朝日は昇っていない。テラスに出てみるとどうやら大雨だ。
俺がフィリピンに来て一週間、初めて雨が降った。ダイビングをすると言うその日に。
気を取り直して二度寝をすると朝には雨がやんでいた。
グレイトだぜ。
朝7:30にコージさんが泊まっているビッグアップルに集合してみんなで朝食を取った。コージさんは電気コンロを持っており、ゆで卵と暖かいコーヒーをいれてくれた。フィリピンはあまり食事が美味しくない、そこらの安い食堂で食べるくらいならなんちゃってフランスパンにジャムやマーガリンをぬってゆで卵と一緒に食べる方がコスパが良くて、しかも美味しい。
西洋人経営の洋食はけっこう美味しいのだけれども1000円位かかってしまう。フィリピンの物価を考えるとかなり高い。フィリピン人の日当は恐らく1000円も無い。
俺も真剣に電気コンロの購入を検討することにした。コンロ一台で自炊が出来るようになるのは大きい。問題は荷物が増えると言うことだけ。留学期間が終わった後は、二週間くらいかけてルソン島を縦断した後にパラワン諸島を観光しようと思っている。その時にきっとコンロがあるととても便利だ。
空はずっと曇天で、食事が終わる頃にはまた降り出してきた。朝にはやんでくれたと思ったのだがどうやら考えが甘かったようだ。一本目、ライセンスを持っている組は9:00から潜りに行った。俺はダイビングのライセンスを持っていないミサキさんと二人でお留守番。
留守番中に俺は前回、フィリピンに来た時に仲良くなったボートマンのギルバートを探しに出かけた。『シュノーケリングに行かないか?』と声を掛けてきたボートマンにギルバートを探しているんだけど?と言ったら『ああ、ギルバートならスーパーに行っているからもうすぐ帰って来るよ』と教えてくれた。タバコを吸いながら待っているとギルバートが帰ってきた。
多少、苦労するかと思ったけれども、ギルバートは超あっさりと見つかった。サバンの町は小さい。よくよく聞いたら教えてくれた兄ちゃんもギルバートの従兄弟だった。
ギルバートと再会をハイタッチで祝い、俺のこと覚えているか?と聞くともちろんだぜマイフレンド!と言って覚えていてくれた。これで帰りにボートに乗って学校のすぐ近くの港まで帰れたり、電話一本で学校の近くの港まで迎えにきてもらえる。来週はギルバートとシュノーケリングにでも行くことが出来る。料金は全然安くないのだけれどもギルバートは凄く良い奴だ。歳も俺と同じ歳で前回、何度もボートトリップに連れて行ってもらっているので信頼出来る。
ギルバートに天気について聞いたらどうやら台風が近づいてきているようだ。恐らく月曜日は台風だと言っていた。海の男が言うんだから恐らくそうなのだろう、どうやらこの日のダイビングは晴れることを期待出来なさそうだ。
リフレッシュダイブ
10:30にコージさんとライセンスを持っている組が一本目のダイブを終えて帰ってきた。みんな寒そうで震えている、いつもはクソ暑いフィリピンで。

ダイビングショップ、ビッグアップルの常連のコージさんがボンベなどを借りてきてくれて俺はコージさんとプールでリフレッシュダイビング。リフレッシュダイブと言っても適当に自分で潜って大丈夫かどうかチェックするだけ、でもよくよく考えてみるとマスククリア位しか練習することが無い。しかし、鼻に水が入ったり散々な目に遭いうまくマスククリアすら出来ない始末。
正直、不安しか残らない。
俺はわりと水泳が得意で働いていた頃は肩こりや腰痛の緩和の為に週二回、1kmを泳いでいた。泳ぐときはいつも鼻から息を吐き出していた、スキューバダイビングでは口ですって口で吐く。どうにもこうにも感覚に慣れずに苦労した。
この日は雨が降っており、誰もダイビングなどしないので11:00からのダイビングはインストラクターの人とコージさんと俺と三人だけだから大丈夫だとコージさんは言う。
一本目を潜ったライセンス組は寒いので休憩すると言っていた。
俺は、だいぶ不安だったが気合いでボートに乗り込んだ。

俺が行ったのはサバンにあるモンキービーチと言うスポットで雨の為にあまり海は透明ではなかった。でも、人がいないのはある意味ラッキーで、俺のようなド素人でもほぼ二人のインストラクターと一緒に潜ってもらえるようなものだった。
一旦、海に潜ってしまえばプールと違い開放感がある。また、珊瑚の坂を下り潜っていくのでとても楽しい。プールで感じた不安とストレスは一瞬で忘れ去ることが出来た。

ちょっと潜る度に耳が痛くなり潜れなくなった。耳抜きは得意だと思っていたが久し振りのダイビングでは思ったように耳抜きが出来なかった。鼻にちょっと圧力を加えると耳抜きは出来るのだがその度に少し鼻から息を吐いてしまう、プールでひたすらマスククリアの練習をしておいてマジでよかった。

モンキービーチは緩い海流があり軽く流されながらダイビングをする。俺には初めての経験だった。久し振りのダイビングでは姿勢制御もままならず、手を使ってなんとか姿勢を制御した。泳ぎは得意な方なのだけれどもダイビングはかなり下手くそで、フィンもうまく使えずかなりもどかしい思いをした。シュノーケルなら俺の方がうまいはずと心の中でそっと呟いた。

結局、25mくらい潜り50分ほどダイビングを楽しむことが出来た。最後、6mの深さで安全停止する際に視界が急に悪くなり1m先も見えなくなった。ホワイトアウトだ、迷子にならないようにかろうじて見えるインストラクターのピンク色のフィンを目指して泳いだ。
ちょうどインストラクターとコージさんの真上辺りに辿り着いた時には彼らの吐く息の泡にもまれて何も見えなくなった。視界ゼロ、かなりパニッたけれどもダイビングで一番大切なのはパニックに陥らないこと。どんなときでも冷静に、そう自分に言い聞かせゆっくりと深呼吸して深度をチェックした。
あれ?ふと上を見上げると水面がすぐそこにあった。どうやら浮かんできてしまったようだった。もう一度みんなのところに戻ろうかと思ったがもうほぼ水面まで上がってしまった後に6mほど潜っても意味は無いだろうと諦めてBCDにエアーを入れて浮上した。
結局、安全停止を殆ど出来なかったけれどもなんとか7年ぶりのダイビングを終えることが出来たことに満足した。
この後、昼食をとりライセンス組とコージさんは三本目のダイビングに向かった。一本目で満足した俺と体験ダイビングで途中リタイアしたミサキさんはまたお留守番することになった。
この日は結局ずっと天候が悪く、寒かった。フィリピンに来て以来、初めて寒いと感じた。でも、コージさんのおかげで俺はなんとか無事にリフレッシュダイブを終えることが出来た。悪天候のため、見晴らしはあまりよくなかったけれどもまた潜れたこと事態がすごく嬉しくて大満足だった。これで次からは不安にならずにダイビングに行けそうだ。
写真は全て一緒に潜ってくれたコージさんが撮ってくれたもの。
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