ミッドナイト・エクスプレス | Young Age Vol.04
2001年6月23日
1968年に撮影されたスタンリー・キューブリックの映画
『2001年宇宙の旅』の中で、人類が広大な宇宙を旅していた頃
1968年の雰囲気がまだ残っていそうなバンコクのチャイナタウンに
『2001年マレー鉄道の旅』のチケットを買いにやってきた。
照りつける太陽
吹き出る汗
バックパックが肩に食い込む
香港とタイが混ざったような雑多な街並み
眼に映る見慣れない風景
何もわからない街を汗だくで歩く
ふと、旅をしている気がした。
思えばここ何年もこんなにも汗だくになって歩いたことはない。
ほんの少し、昔を思い出した。
10代の頃の気持ちを取り戻したような気がした。
ただ、もっと世界を見てみたかった。
ただ、もっと自由に生きたかった。
つまらない大人には、なりたくなかった。
いつのまにか、社会に飲み込まれ
いつのまにか、組織に飲み込まれ
お金に支配され、お金のために働いた。
つまらない社会に中指立てて
俺の人生はこれからだと言い聞かせていたけれども
いつのまにか、満員電車に飲み込まれていた。
そんな生活が嫌で
そんな生活から逃げ出したくて
旅に出た。
ミッドナイト・エクスプレス | Young Age Vol.04
深夜特急
英語で言うと ミッドナイト・エクスプレス。
俺はバンコクからサムイ島に行く為にミッドナイト・エクスプレスに乗っていた。
正確に言えばただの寝台車(座席が夜になると二階建てベッドになって寝ながら移動できるというナイスな電車)だったが俺はミッドナイト・エクスプレスと呼んでいた。
ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者のあいだの隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだ。
(深夜特急 第1便 巻頭より)
俺は、枕木の音を聞きながら眠りについた。
旅情緒あふれるシュチエーションだ。
ベットの上で寝ていれば目的地にたどり着く。
快適で、最高の乗り物だった。
俺は、今までに色々な乗り物に乗ったが長時間移動するならば、ミッドナイト・エクスプレスが一番のお気に入り。尊敬する沢木耕太郎氏はバスでユーラシア大陸横断をやり遂げたが、俺はバスがあまり好きではなかった。可能な限りバスでない乗り物を好んで使う。
だから列車が通っている場所では、極力列車を使いたいと思っていた。
朝になると車掌さんに起こされた。
車掌さんが一個、一個、ベッドを座席に戻していく。
さわやかな朝、車窓からの景色も異国情緒があってとても良い。
今度は別の人がティーパックとポットをもってやってきた。
モーニングティーだ。
なんと優雅な朝だろう、俺はこのサービスに心底感動した。
成田エクスプレスとはえらい違いだ。
一通り、モーニングティーを配り終えると今度は料金を回収し始めた。
そりゃそうだ、この国で、こんなサービスが無料のわけがない。
料金は20B(60円ちょっと)
(日本人の俺にとって高くはないが、当時、タイの屋台飯は一食25Bが相場)
しかし、この爽やかな朝に爽やかな紅茶。
優雅なひと時に変わりはない。
それだけで十分だった。
俺が乗ったミッドナイト・エクスプレスはただの寝台車列車で、脱獄ではない。
ただ、俺にとって旅をするということは日本社会からの脱獄だった。
満員電車で輸送され、組織に管理される日々に心底嫌気がさしていた。
誰の為でもなく、何の目的があるわけでもない。
ただ、行ってみたかった。
ただ、旅してみたかった。
ミッドナイト・エクスプレスに乗って日本から脱獄したかった。
To Be Continued
あとがき
相変わらず、若き日の俺はもがいている。
町田に住んでいた頃の数年間は、小田急線が本当に嫌で、嫌で仕方がなかった。
今考えると、10代後半の年齢と20代前半の年齢の時にどれほどの差があったのかよくわからないが当時の俺としてみれば20代半ば近くになって、10代の頃を思い、あの頃は若かったなどと思っていたのだろう。
当時、日本の社会に馴染めず、世の中を斜めに見ながらクソッたれと中指立てていた事に間違いはないが、実のところ仕事や満員電車以外の生活は結構楽しかった。この時は少々カッコつけて日本社会からの脱出だとか、アナーキズムに感化されちゃっているけれども、本当のところ沢木耕太郎に影響されて、単にミッドナイト・エクスプレスとか言いたかっただけっぽい。また、日本社会を批判する風刺っぽいことが言いたかった年頃でもある。
なんせ初めての旅で、自分に酔いしれていた時のことだから。
坂本龍馬が土佐藩を脱藩した時のように
俺もミッドナイト・エクスプレスに乗って日本から脱獄したかった。
わずか2ヶ月後に帰国する予定だった訳だから脱藩というよりプチ家出に近い。
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