世界遺産ハンター Young Age 序章
公開日:
ヤングエイジ
2001年6月
Wi-Fiと情報が世界を多い尽くすより、少し前の時代。
人々は、有線でインターネットに接続し、ネット上にある情報は、まだ心もとなかった。
ネットよりも書籍の情報の方が頼りになる時代。
人々は、旅の道しるべに地球の歩き方や旅行人などの書籍を利用していた。
そんな時代に
俺は、バックパッカーと言う旅のスタイルを知り、憧れた。
世界遺産ハンター Young Age 序章
あれは、24歳になったばかりの夏だった。
今はなきJ-Phoneの販売員をしながら必死に旅の資金を貯めていた。
今では当たり前のようにiPhoneで写真を撮って、音楽を聞いて、GoogleMapで地図を見て、ブッキングドットコムで宿を予約する事が出来る。しかし、当時はJ-PhoneのSH04と言う機種に初めてカメラが搭載され、写メールと言う造語が作られたばかりの時代だった。Jからiに変わっただけで全てが変わったように思える。
仕事仲間には恵まれていたけれども、毎日、お金のためだけに携帯電話を売る日々には、心底嫌気がさしていた。すし詰めの満員電車で輸送され、偉そうな客にペコペコと頭を下げ、毎日が消費されていく。
一体、いつから俺の人生はこんなにつまらなくなってしまったのだろうか?
クソだな。
殺伐とした雰囲気の小田急線は、俺の心に容赦無く追い討ちをかける。
どいつもこいつもシケたツラしていやがるぜ。
そんなにマイホームが大事か?
よくこんなクソみたいな通勤電車に耐えられるよな。
くたびれたスーツに身を包むサラリーマンどもの負のオーラが俺のATフィールドに侵食してくる。
『アンチATフィールド、臨界点を突破!』
『駄目です…このままでは、個体生命の形が維持できません!』
当時、俺の心は凄まじく荒んでいた。
毎日、ストレスと時間を消費して小銭に換金していた。
ただ、お金のためだけに人生を切り売りしていた。
まだ、本当の人生は始まっちゃいないと言い聞かせていた。
40歳になってシケたツラしたおっさん達と同じような年齢になってみれば、彼らの大変さや、背負ったものの大きさが容易に想像できる、しかし若かった俺は、彼らをATフィールドに侵食する使徒だと思っていた。
そんな俺の唯一の心の支えは、バンコクから陸路と航路のみでバリ島を目指すと言う旅の計画だ。
当時の愛読書はもちろん、沢木耕太郎の深夜特急。
まずは、深夜特急になぞってマレー半島縦断と言うわけだ。
それに俺のオリジナリティを加え、シンガポールからバリ島を目指すと言うのが大まかな計画だ。
『東南アジアなら20万〜30万もあれば2ヶ月くらい余裕で旅できるよ』
俺にバックパッカーなる旅のスタイルを教えてくれた先輩が言ったこの言葉に胸を踊らせる。
まず、最初に目指すべき場所はバンコクのカオサンロードだ。
下北沢で軍物の安くて大きなバックパックを買い、『地球の歩き方』と『写ルンです』を突っ込んで家を出た。このクソみたいな人生から逃げ出す為に旅に出た。
To Be Continued
あとがき
先日、引っ越しをした際に当時書いていた日記を発見した。
俺は昔からわりと記録魔で、旅に対して何らかのアウトプットをしたいと思っていた。日記なんて一度も書いた事がないのに、この特別な冒険は記録するべきだと思っていたのかもしれない。おそらく、これは生まれて初めてまともに書いた日記だ。
ただし、途中で終わっている。
後ちょっとのところで投げ出しちゃうところも昔の俺っぽさがよく出ている。
それにしても、若き日の俺は荒んでいた。
毎日、毎日、お金のために人生を切り売りして、資本主義飲み込まれ、それでも中指立てて、俺は旅に出るんだと息を巻いていた。反骨精神は若者の特権だ。
今だったら東南アジアで2ヶ月程度の旅など、ほんの小旅行に行くような気持ちで行けるが、当時の俺には大冒険だった。この旅は、2015年から2017年に掛けた約2年間の放浪の旅に出るときよりも、期待と不安に満ちていた。そして後に俺の人生に大きな影響を与える事になる旅だった。
実際、この旅をきっかけに俺の人生の方向は大きく変わった。
帰国後、また、旅に出てもすぐ仕事が見つかるように手に職を持とうと思ってWEBの勉強を初め、今の仕事に就いた。今思えば2年も旅して帰ってきてすぐにフリーランスの真似事のような状態で、何とか食っていけてるのは、この若き日の旅があったからだ。
振り返ってみれば、たくさん回り道もしたけれども、24歳の時に想像した人生を今、歩んでいる。
これからしばらくの間、世界遺産ハンター Yung Ageを連載したいと思う。
公開日:
:
最終更新日:2017/11/05
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