いざ、船旅へ | Young Age Vol.27

いざ、船旅へ
2001年7月22日
朝7:30
眠たい目を擦り、出発の準備を整えた。
タクシーで港へ向かう。
辺りは人で溢れ返っていた。
こんな言い方は失礼かもしれないがまるで難民の群れのような場所だった。
見渡す限り外国人は俺ただ一人。
そんなはずはない、しかし、他に外国人が見当たらない。
ほとんどインドネシア人しか見当たらない。
俺にはこの辺の国の人の国籍が見分けられないが俺が異邦人でこの場所で目立つ事くらいは理解出来る。
俺は初めての船旅にワクワクしていた。
やっとこの町とオサラバ出来る。
いよいよ首都ジャカルタに向けて出発出来る。
俺はこの船に乗るために約一週間も足止めを食らっていた。
やっと出発出来る。
しかし、 船着場に来て状況は一転した。
な、何じゃコリャ・・・
物凄い数の人。
何人くらい居るのか見当もつかない。
その中に日本人は俺ただ一人。
不安以外の何ものでもない。
心細かった。
この町についた時と同じ感じ。
いや、それ以上に不穏な感じ。
何がヤバイ訳でもないが俺はひしひしと感じていた。
ここはヤバイ!
ガラの悪そうな連中が沢山いる。
辺りを見回す。
警戒する。
後ろポケットに手を入れ財布を掏られないように防御する。
しかし、周りは人だらけ。
誰一人信用ならんッ。
どっか端に行って腰をおろしたい。
その瞬間、人相の悪い男に軽く押される。
とっさに身構える俺。
後ろポケットのガードはフリーになる。
その瞬間、別の男が俺の財布を掏って人ごみに消える。
『ファッキン マイ ウォレット!!! マダファッカー!!』
俺の叫び。
負け犬の遠吠え。
俺を押した男はすまし顔で言う。
『警察に言ったほうがいいぜ 』
Fuck!!と捨て台詞。
殴り倒してやりたかった。
でも、返り討ちにあいそうだったのでやめた。
むかつくその男を押しのけ俺は端へ避難した。
気分が悪かった。
何も出来ない自分が情けなかった。
ここがアウェイだと強く感じた。
最初から最後までこの町にはしてやられた。
しかし、俺も馬鹿じゃない。
財布には20ドルにも満たない現金しか入れていないはずだった。
船のチケットやメインのお金は別の所にちゃんと持っている。
大した被害じゃない、むしろ財布は強盗にカツアゲされた時に差し出す為に持ってた囮用の財布だ。
最悪の場合を想定したダミーの財布だ。
だから被害的には問題はない。
でも、精神的にかなりのダメージを負った。
ここはヤバイと思っていても取られてしまった自分の甘さが腹立たしかった。
俺は今までカモられる奴は間抜けだからカモられると思っていた。
大抵のカモは地球の歩き方に書いてあるような典型的な手口に引っかかったりして金を巻き上げられる。
しかし、ここにカモは俺しかいなかった。
何としても俺から金を巻き上げなければならない。
そんな単純なことに気が付かない俺もまた、間抜けだった。
ほとんど旅行者のいない場所。
初めてそんな場所を旅した。
アウェイを痛感した。
俺、ただ一人。
この上なく不安だった。
あとがき
旅をしていると、あの手この手で騙そうとする奴らやボッタクってくる奴らは山ほどいる。
でも、彼らはそれほど悪い奴らじゃない、あくまで何も知らない旅行者と知恵比べしているだけだ。
ほとんどの場合、強引な手口を使わない。
ボラれるのも騙されるのもある意味、ある程度その金額に納得してのことだ。
後からずいぶん高かったな、やられたなと思ってもその条件でOKしてしまっている自分がいる。
でも、今回の件は強引に財布を奪われた。
それも、人が大勢いる場所で。
被害は大した事なかったけれども精神的にはかなりのダメージだった。
このような強引な手口で来られるとボッタクリや詐欺とは比べ物にならないほど防御するのが難しいからだ。
しかも、見渡す限りアウェイ。
言葉もろくに通じない。
旅行中にこんなにも心細い思いをしたのは初めてだった。
それでも俺は運がいい。
この先、沢山の国に行ったし、なんども、なんども旅に出た。
だけど、この一件以来、このような事は一度もなく、無事に旅をする事が出来た。
今までの旅人生の中で、一番、やばいと思った事がこの程度の事だなんて相当恵まれているかもしれない。
(もちろん、食中毒とかそう言うのは抜かして)
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