旅の開放感 | Young Age Vol.09
2001年6月27日
当初の目的地であるチャウエンビーチを目指す事にした。
突発的なスコールにやられ偶然にも泊る事となったトムの宿は居心地がよく、ついつい長居してしまった。
今にして思えば、その場所が気に入ったのならば居たいだけいればいいのだが当時はまだ、旅の本質は移動する事だと信じ込んでおり先を急いた。
15年後、この場所は思い出のかけらも見当たらなくなってしまっていると言うとこには当然、気がつかない。
旅の開放感 | Young Age Vol.09
朝、トムとブルース・ウィリス似のイギリス人に別れを告げ宿をチェックアウトした。
たった三日だったが馴染みの顔ができると移動するのが寂しい。
気を取り直してバックパックを背負い、バスが出ているラマイビーチに向かって歩き出した。
たった1キロの道のりだが南国の太陽は容赦無く降り注ぎ、暑さにやられクラクラしてきたので木陰に腰をおろす。
そう、俺は一人で旅をしている。
疲れたら休めばいい。
眠ければ宿を探せばいい。
無理をする必要は全くない。
ふと、ものすごく自由な気持ちになった。
東京で働いていた時、昼休憩は1時間だとか、小休憩は10分だとか沢山のルールを決められていた。
冗談じゃねーっつーの!
馬鹿馬鹿しいとか思いながらもお金のためにルールに従っていた。
やってられっかボケぇ!
今は全部、俺の時間。
これが俺の人生。
一人でタバコをふかしながら思わず笑ってしまった。
はたから見たらただの危ないやつ。
元気を取り戻した俺はまた歩き始めた。
ラマイビーチの入り口で朝食を取る事にした。
相変わらずチャーハンしか頼まない。
食堂の店員が俺のことを知っていると話しかけてきた。
「俺も同じ電車でスラタニに来て、同じフェリーでサムイ島まで帰って来たんだよ」
「これからどこに行くんだい?」
サムイ島も意外と狭い。
「チャウエンビーチに行くんだ」
と答えると
それなら安いピックアップバン(乗り合いタクシー)で行くといいと言って車を捕まえてくれた。
この島の人々は親切な人ばかりだった。
チャウエンビーチでは、旅の地図帳に載っていた安宿のチャーリーズハットバンガローに泊る事にした。
宿の店員は無愛想で、料金は個室で一泊200バーツ(600円ちょっと)。
トムの宿と同じ料金だが部屋は狭く、明かりが少ない。今にして思えばトムの宿はかなり快適だったが、荷物を背負って他の宿を探すのも面倒だったのでそのまま泊る事にした。
隣の部屋に泊まっている白人と2、30分くらい小話をして町に出た。
下手くそながらにも1対1なら英語で会話できる自分が誇らしかった。
こう言うことがしたくて英語を一生懸命に勉強したのだから。
内心、ようやく俺の時代がやって来たのだと感じていた。
あ〜、旅とはなんと素晴らしいものだろう
ガキの頃からスナフキンに憧れ、24歳にしてやりたかったことの一つを今、している。
人間、本当にやりたいと思った事は出来る。
何かの本で読んだ言葉を思い出す。
人間、想像できる事はやれば大体できる。
出来ない事は想像すら出来ない。
素晴らしい名言だ。
あとがき
日記を読んでいてまず思い出す事は、毎日毎日、携帯電話を売りながら仕事に時間を飲み込まれる日々が嫌で嫌でたまらなかったのだなと言うこと。日々のストレス、そして旅に出てからの開放感。しきりに俺の時代だとか俺の世界だとか俺の人生が始まったみたいな事が書かれている。
旅に出たくらいじゃ人生は変わらない。
でも、人生を変えるきっかけを掴むこともある。
若い時なら影響も大きい。
事実、俺はこの旅をきっかけに人生が拓けた。
退屈で仕方のなかった携帯販売の仕事を辞めてWEB制作の勉強を始めた。
今は、この旅の後に学んだ技術のおかげで飯が食えている。
10数年後には世界中を旅行することが出来たのはこの旅があったからだ。
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